商品のネーミングはお客さんにアピールするための大切なもの。簡単に変更することはできませんが、もし名前を変えるだけで爆発的に売れるとしたら、商品名の変更はぜひともやるべきでしょう。
ここではおなじみの「シュレッダーハサミ」を例にとって、「商品名の変更」と「想定外の使用方法」「柔軟なカスタマイズ対応」の3点から、視点変更の重要性を考えてみました。
用途とネーミング、ちょっとしたパッケージ変更で「大化け」する商品もあるのです。
もとは「きざみ海苔用ハサミ」だった人気アイテム「シュレッダーハサミ」
「シュレッダーハサミ」とは、個人情報が記載されている書類などを細かく刻んで切って処分するためのハサミです。使い方は一般的なハサミと同じですが、ハサミの歯が何枚か重なった形をしており、一度切っただけでとても細かく切れるのでシュレッダーがわりに使用できるのです。
しかしこのハサミは、もともと料理で使う「きざみ海苔」を作るアイテムとして販売されていました。きざみ海苔を自宅で作りたい人からの需要はあるが購買層がとても限定的という商品でした。
しかしあるお客さんが「自宅で、シュレッダーがわりに封筒やはがきなど個人情報が記載されているものを捨てる前に切り刻むのに便利」と言ったことから急展開。
「シュレッダーハサミ」として売り出したところ、手軽さからたちまち人気に火が付き、急激に売り上げが上がったのです。
発想の転換が売り上げを生む
このように、本来の使用用途とはまったく別の使い方で人気が高まるアイテムは珍しくありません。
たとえば文房具のポストイット。こちらも強力な接着剤を作る過程で「非常に粘着性が高いがすぐはがれる」という一長一短の接着剤ができてしまったことから生まれた商品です。接着剤としてはすぐにはがれてしまうために利用できませんでしたが「貼った後に、いつでも好きなように剥がせる」点がメリットに転じて、付箋・ポストイットとなりました。
シュレッダーハサミもポストイットも、マーケティング上から見れば「失敗作」です。
しかし実際のユーザーからの声を丹念に拾い上げていくと、失敗作のなかに別の可能性を見いだせる事があります。本来は想定されていない使用方法が商品の新しい機能となり、本来の用途を凌駕してしまった好例なのです。
さらにシュレッダーハサミは、売り出してみたら予想以上に売り上げが伸びました。つまりだれも考えていなかったような客層・需要が存在していたということになります。
このように発想の転換で売り上げを生み出すには顧客の声を聞くことが重要ですし、声として社内に入ってきた想定外のアイディアに即座に対応する柔軟性も必要でしょう。
発想の転換+カスタマイズで大ヒット商品に
発想の転換をする、本来の用途とはまったく違う使用方法を採用して新しい商品として売り出す。
簡単なことのように思えますが、なかなかできません。
なぜなら商品を開発しているひとや「きざみ海苔ハサミだ」とすでに認識しているひとの頭の中には、他の目的に転用すると言う発想がないからです。そのため、顧客からの声として聞こえてきた情報もそのままスルーしてしまう恐れがあります。
発想の転換をするためには、日ごろから思考を柔軟にしておかねばなりません。またどんな物事もそのまま受け入れて再検討するという、思考上の癖をつけておく必要もあるのです。
さらに新しい商品として売り出すときには、ちょっとしたカスタマイズをほどこすとより効果的です。
シュレッダーハサミの場合は持ち手の色を変えてパッケージを新しくしただけで爆発的に売れましたが「ラカタンバナナ」というバナナでは「新しい発想を売り込むための新パッケージ」が役に立ちました。
「ラカタンバナナ」とはフィリピンでよく食べられている種類のバナナで、栄養価が高くクエン酸が豊富に含まれています。しかし酸味があるバナナであまり売れませんでした。
しかしクエン酸がエネルギー代謝に効果的な点から「スポーツ時に役立つバナナ」ということで「スポーツバナナ」と名付けてシールを貼り、売り出したところ劇的に売り上げも認知度も上がりました。
価値観を「味」から「機能性」にかえるという発想の転換とパッケージの変更が功を奏した一例です。
まとめ
どのような商品にも「化ける」可能性が秘められています。発想の転換で商品をリニューアルしたい場合は、以下の2点を考えてみましょう。
- ユーザーの声として、本来の用途以外の使用方法を吸い上げる
- 柔軟に方向転換をして、パッケージやデザイン変更などのカスタマイズで効果的に売り出す
どちらも「まったく新しい発想を素直に受け入れる」という企業側の柔軟性が求められます。思考の方向を百八十度転換することは簡単ではありませんが、あらためて商品を見直してみると新しい価値・用途が見つかるでしょう。