コンテンツマーケティングの成功事例・熊野古道編

「熊野古道(くまのこどう)」は、ユネスコ世界遺産に登録されている外国人に人気の観光地です。
実は完璧なコンテンツマーケティングの結果、観光客が約35倍になったという貴重な成功例でもあります。

ここでは熊野古道マーケティング成功の理由を「的確なターゲット選定」「徹底的なユーザー視点」「良質なコンテンツ」の3点からご紹介します。
ターゲットの需要と有用性の高いコンテンツが合わされば、爆発的な集客力を持つのです。

観光客の伸び悩みから、人気スポットへ成長

熊野古道は、和歌山県新宮市の「熊野速玉大社(くまのはやたまたいしゃ)」と田辺市の「熊野本宮大社(くまのほんぐうたいしゃ)」、そして那智勝浦町の「熊野那智大社(くまのなちたいしゃ)」の「熊野三山(くまのさんざん)」を参拝する道です。
2004年に世界遺産に認定された後は、観光客数が増えたものの伸び悩む時期が続きました。

しかし現在では、アメリカやヨーロッパなどから観光客が押し寄せる一大観光地へ成長。
いったいなぜ熊野古道のマーケティングは、これほど成功したのでしょうか。
順番に3つの理由を見ていきましょう。

1.明確なターゲットの絞り込み

最大の理由は「ターゲットを外国人に絞り込んだ」ことです。
全長約600キロの及ぶ熊野古道には複数の巡礼ルートがあり、たとえば「中辺路(なかへち)」というルートは田辺市から熊野本宮大社まで約38キロの山道を歩きます。

本来なら宿泊しながら2~3日かけてじっくりと踏破するのが理想。
しかし観光バスでやってくる国内の観光客は、滞在時間が短いのが弱点でした。バスでやってきて、ほんの少しだけ熊野古道を見て帰ってしまう。

もちろん周辺で宿泊もしません。
そこで社団法人の「田辺市熊野ツーリズムビューロー」は主なターゲットを海外からの観光客に切り替え、しかも厳しい山道を歩ける体力のある客層に絞り込んでマーケティングを展開していきました。

ちなみに「田辺市熊野ツーリズムビューロー」は田辺市内の観光協会を基盤とした官民共同の観光プロモーション団体です。
こうやって1000年以上の歴史のある熊野古道を「日本の巡礼文化を身体で体験できる」体感型観光地として世界中に発信。

地道な努力が日本人・外国人を問わずに熱心なリピーターを生み、SNSを介してさらに魅力が拡散されて熊野古道人気を後押しすることになったのです。

2.徹底的なユーザー視点

さらに重要なことは、外国人観光客の視点に立ってサイトの利便性を磨き上げていったことです。
熊野古道では初めからメインターゲットを欧米やオーストラリアからの観光客に絞りこみました。

しかし当時の田辺市内には、外国人観光客を受け入れた経験のある宿はほとんどない状態。
そこで田辺市熊野ツーリズムビューローはサイト内容の拡充と同時に地元の宿に対する働きかけも始めました。

用意しておいた英語のマップやガイドブックを置いてもらい、バラバラだった観光パンフレット類も多言語化。
マーケティングの初期段階から世界各地の外国人を受け入れることを想定してさまざまな準備や情報提供を重ねていったのです。

さらに2010年からは「熊野トラベル」という地元密着型の旅行会社も開始。
自前の旅行会社を持つことでフットワークも軽くなり、現在では熊野トラベルが世界約60カ国から田辺市にやってくる観光客を迎える重要な窓口になっています。

3.良質なコンテンツ

サイトでは「外国人向けの良質なコンテンツ」を発信し続けました。
コンテンツマーケティングでは潜在的顧客に対して「役に立つ情報を提供」することが最も重要なポイントです。

熊野古道のマーケティングでは、コンテンツのテーマ選定や画像チョイス、コンテンツ内容に至るまですべてを外国人からの好感度の高いものに絞り込んで作成・発信しました。
もちろんコンテンツは従来の日本人向け記事を英訳したものではなく、外国人観光客用に新しく作成したものです。

コンテンツから田辺市熊野ツーリズムビューローのサイトへやってきた外国人は、熊野古道に関する情報や宿の紹介、モデルコース、オプションツアーの情報などを見ることができます。
宿の手配やオプションへの申し込みはクリックするだけで熊野トラベルのサイトへ飛んで手続きが完了しますから、ストレスがありません。

どこまでも徹底的に「ユーザー目線」「有用性」「利便性」にこだわって、コンテンツやサイトが作られているのです。

まとめ

完璧なコンテンツマーケティングの成功例と言われる熊野古道のマーケティング。
注目すべきは以下の3点です。

1.ターゲットを絞り、特定の潜在的ユーザーに特化したマーケティングを展開
2.徹底的にユーザー視点に立ったサイトの作成
3.ユーザーの有用性を考えたコンテンツの充実

いずれもコンテンツマーケティングでは基本中の基本ですが、この3点を完璧にやり遂げたケースはあまりありません。
熊野古道は基本をやりぬいた点でユーザーから高く評価を受け、数多くのファン、リピーターを生み出すことに成功したのです。