マーケティングの世界では注目を浴びて、それまでの既存の営業スタイルにとってかわる新しい動きが常に生まれています。
「プル型マーケティング」は、今やWebマーケティングの主流になりつつある手法。
ここでは「プル型マーケティングの概要」からはじめて、実際の成功事例3件をご紹介いたします。
従来の「プッシュ型マーケティング」とは違い、どこまでも顧客主体の手法である点が大きな特徴なのです。
プル型マーケティングとは
「プル型マーケティング」とは、自社製品やサービスについて顧客が興味を持ち、みずから購入に動いてくれるように喚起・誘導していくマーケティング方法です。
「インバウンドマーケティング」ともいわれます。
これまでの日本の基本的な営業スタイルは、CMやテレアポ、企業訪問といった直接的な売り込みが中心。
比較的、短期間で売り上げにつながるのがメリットでしたが、現在では「徹底した顧客目線」で展開する「プル型マーケティング」が主流となりつつあります。
コンテンツやSNSを使ったプル型マーケティングでは「届けたい客層に、確実に情報を届けられる」点が大きなメリット。
企業と顧客との信頼関係がしっかりと構築されるので、長期間にわたって購入してくれる優良顧客を育成できます。
それでは、具体的なプル型マーケティングの成功例3つを見ていきましょう。
今では、大企業もプル型マーケティングを採用してすでに成功しているのです。
プル型マーケティングの成功事例①キリン
キリンはキリンビールでおなじみの、国内大手の飲料メーカーです。
こちらでは自社サイトの中で「キリンレシピノート」という下部サイトを運営しています。
サイト内では「カンタン・おいしい・楽しい」をテーマにしたレシピを紹介。メニューはビールやワインなどにあうおかずやおつまみ、簡単に作れるスイーツまでとても多様です。
注目すべきは、飲料メーカーとして自社商品の売り込みをする姿勢がとても薄い点。
キリン商品にあうレシピを紹介するという位置づけですが、実際のレシピ内容にはキリン商品はほとんど関係がありません。
ただレシピ横に、「この料理に合う飲み物」として、おすすめのキリン商品がピックアップされているだけなのです。
こちらのレシピサイトの目的は「おいしく簡単にお料理」であり、なによりも顧客の利益が優先されているのが如実にわかります。
セールス色が薄く、しかも使えるレシピサイトを無料で公開することで、キリンというメーカーのめざす企業理念がユーザーに理解されやすくなっています。
プル型マーケティングの成功事例②ベルリッツ・ジャパン
ベルリッツ・ジャパンは語学レッスンの有名ブランドです。
こちらでは「ベルリッツブログ」という語学レッスン用のコンテンツサイトを運用しています。
週に1回の更新頻度で、その時期に検索されることが多いキーワードを使ってタイミングよくコンテンツを配信。
コンテンツ配信とともにWeb広告なども併用し、その時期ならではのコンテンツに注目が集まるようにしています。
現在ではブログコンテンツをきっかけとした見込み客からの問い合わせも増えており、紙媒体の広告と同様に集客力を発揮しています。
このブログコンテンツの特徴は、MP3の音声データを豊富に使っていること。
もともと外国語に興味のあるユーザーをターゲットとしているために、音声で耳から理解したいというニーズが非常に高かったそうです。
そのため英語のトレーニング用ブログはすべて音声入り。顧客目線に立って、ニーズを的確に拾い上げている好例です。
プル型マーケティングの成功事例③三越伊勢丹
つねに攻めている百貨店、三菱伊勢丹。
こちらではECサイトではなく、ファッション情報を発信する「FASHION HEADLINE」というサイトを運営しています。
注目すべきはその徹底した中立性。
サイトは中立性を守るために、三越伊勢丹+ニュースサイト運営の実績があるIT企業・イードとの共同出資という形をとっています。
そのため三越伊勢丹の商品紹介だけでなく、その時期に必要なファッション情報をどんどん提供していくというスタンスのため、プロのバイヤーによるセレクトや気になる雑貨など、印象的なコンテンツが多いです。
宣伝色を排することで、かえって三越伊勢丹のブランドがきわだつという成功例です。
まとめ
プル型マーケティングは、顧客目線に立った情報提供で、顧客とのあいだに緊密な信頼関係を作り上げていくのが特徴です。
マーケティング展開時には以下の2点に注意しましょう。
- 徹底して顧客目線に立ち、情報を届けたい客層をねらって発信する
- サイト、コンテンツでは情報提供に集中し、中・長期的に顧客を育成する
プル型マーケティングは成果が上がるまでに時間がかかることもありますが、いったん動き始めたら連鎖的に反応がある手法です。
しんぼう強く、時間をかけて顧客を育成していきましょう。